多くの人にとって「家」を考えることは、家族や自分自身のこれからの人生を見つめることでもあるはず。
夢のマイホーム購入、賃貸で身軽に日本中を飛び回る…。答えは人の数だけ存在しますが、今回ご紹介するSさんご夫婦は、「自分で手を動かして“やりたいこと”を実現したい」とマンションリノベーションの道を選択しました。
この日、八柱にあるSさん宅の広いダイニングテーブルを囲んだのは、施主であるSさんご夫婦と、リノベーションを担当したつみき設計施工社(以下「つみきさん」)の河野さんご夫婦(直さん、桃子さん)、物件探しをお手伝いしたomusubi不動産・市川の3者。
リビング横の和室では、Sさんご夫婦のお子さんと河野さんご夫婦のお子さんが仲良くおもちゃを広げて遊んでいます。「大きくなったね〜」と子どもたちの話をする様子は、まるで親戚の集まりかのようにアットホームな雰囲気。
今回はSさんご夫婦の住まいづくりに関わった3者に、それぞれの立場から見た物件探しやリノベーションの進め方、DIYを取り入れた部屋づくりのこだわりなどについて振り返ってもらいながら、ざっくばらんにお話しいただきました。リノベーションや住まいづくりの楽しいヒントが、たくさん詰まった内容です。
〜目次〜
omusubi不動産との出会い
物件探しの変遷
周辺環境について
つみきさんにお願いした理由
リノベーションの進め方
暮らしやすさを考えた設計
“独り立ち”するDIY
住まいづくりを振り返ってみて
omusubi不動産との出会い
市川:最初にomusubi不動産に来てくれたのが、2015年の夏くらいでしたよね。どういった経緯でomusubi不動産に部屋探しのご相談をしてくれたんでしょうか?奥さま:結婚するってなってどこに暮らそうか考えたときに、勤務先近くの松戸で探そうって。で、私の夢がハンモックをつけられるお部屋に住むことだったから(笑)、自分でビスとかが打てるような部屋がよくて。それで探してたらomusubiさんを見つけて、「あかぎハイツ」に住みはじめたんです。
市川:「あかぎハイツ」はどのくらい住んだんでしたっけ?
旦那さま:5年弱ですね。
直さん:最高ですよね、「あかぎハイツ」。大ファンです。
一同:(笑)
奥さま:大家さんの赤城さんも含めて、雰囲気がすごくよくて。家にいることが多い育休中も、子どもを連れて下に降りて、赤城さんにおはよーって挨拶して他愛もない世間話をする時間が、すごく居心地よかったなぁって思います。
市川:そんな「あかぎハイツ」に暮らされているときから、Sさんご夫婦はつみきさんのことを知ってたんですよね。
奥さま:インスタで(笑)。ちょうど私たちが入居した頃に「あかぎハイツ」をリノベーションされてたじゃないですか。
直さん:うんうん。確かに5年前ぐらいでした。
奥さま:それでつみきさんを知ってて。私はネット上でお二人を見ていたから、餅つき大会とかに行ったときに「あ、あの人がつみきさんか」って(笑)。
直さん:「あかぎハイツ」は餅つきのある賃貸ですもんね。
奥さま:そうそう(笑)。
市川:Sさんご夫婦は「科学と芸術の丘」も手伝っていただいたり、omusubi関連のいろんな行事にもちょこちょこ参加してくれてましたよね。
奥さま:私はもともと手を動かして何かをつくることが好きだったので、イベントにはよく参加してました。クロスを貼ったりもしたよね。
旦那さま:ワークショップね。
市川:覚えてるのが、まだomusubi不動産の事務所がさくら通りにあったときに契約の更新に来られて。そのときにちょうど目の前のマンションをうちでリノベしてたから、それを見てもらったんですよね。
奥さま:見ました! リノベーションの物件を売り出そうと思ってるんだけど、Sさんたちどう?って殿さん(omusubi不動産代表・殿塚)に言われて。ゆくゆくはあるかなぁって話をしたら、じゃあちょっとそこ見ていきなよ、みたいな感じで(笑)。
市川:でもそのときはリノベーションはそんなに考えてなかったんですよね。
旦那さま:具体的には考えてなかったと思うんですけど、将来的には考えてたから。
奥さま:もともと新築で戸建てを買うってイメージはあんまりなくて。リノベーションして、自分たちが住みやすい家をつくりたいなって感じだったかなぁ。
市川:本格的に考えはじめたきっかけは何かあるんですか?
旦那さま:子どもが生まれて、もうちょっと大きいところに住みたいねって。
奥さま:子どもがひとり増えるだけで荷物も増えるし、こんなにスペースが必要になるんだって思いました。
桃子さん:荷物もそうだし、あと広い床も必要ですよね。
奥さま:そうですよねぇ。それでomusubiさんのオンラインイベントに参加して、より具体的にイメージできたから、じゃあリノベーション会社を見つけようって動き出したんです。
市川:リノベ会社はいくつか見たんですか?
奥さま:物件探しからリノベーションまで一括でできるところを探して、見学会にもいくつか行ったんですけど、なかなかいいところが見つからなくて。あとは「あかぎハイツ」の人のよさを心地よく思ってたから、そういう「人との繋がり」を大事に家も探したいなと思って、omusubiさんに相談したんです。
市川:去年の夏ぐらいにオンラインで、殿さんと僕とSさんご夫婦の4人で打ち合わせしたんですよ。そのときはomusubiで扱ってない物件も買えるんだってことをご存知なくて。
旦那さま:扱ってる物件以外でもomusubiさん経由で売り買いできるんだってことを知らなかった。
奥さま:HPに載ってる物件しかないと思ってた(笑)。
市川:そうですよね。ご相談いただければ、HPに掲載していない物件の売買もお手伝いできるんですよ。
物件探しの変遷
そうしてomusubi不動産とSさんご夫婦の物件探しはスタート。家の購入は一世一代の買い物であるからこそ、いろいろな条件を吟味してじっくり検討していきました。
この日は市川が、当時内見した物件の資料を持参。物件探しの変遷を辿りながら、当時を振り返ります。
旦那さま:最初、omusubiさんで扱ってる物件を見たんですよね。市川:リノベしてないですけど、「リノベの素材」(未内装中古マンション)の物件として売り出してた物件ですね。
旦那さま:最初は、1階で庭がある物件を探してたんだよね。
奥さま:そうそう。
市川:次に、参加してくれたオンライン内覧会で紹介した物件を見に行こうってなって…。
直さん:ここは1階だけど庭がないんですね。
旦那さま:ベランダがあるんですよね。
奥さま:それで、ベランダが広かったら庭がなくてもいいかもって話になって。
市川:で、みのり台の「あかぎハイツ」の近くの物件を見に行きましたよね。すごく気に入ってたマンションだったんですけど、狭かった。
奥さま:そのあとは、広いけどベランダからの景色がよくない物件や、なんとなくマンションの雰囲気が合わない物件が続いて…。
旦那さま:この辺でみのり台から離れて、常盤平の方も見てみようかって探しはじめたんですよ。ここも割とよかったのかな。
奥さま:でも常盤平ってエリアが馴染みもないし、遠くて…。
旦那さま:次の物件はエリア的にもよくて広いバルコニーがあって、面白いなと思ってたらあっという間に業者に買われて…。
奥さま:値段がすごい釣り上がったんだよね(笑)。
市川:最初はもっと安かったんですけど、業者さんが買って高く出したんですよ。だから工事費用が取れなくなっちゃった。このときに直さんにも相談して、どれくらい希望を叶えられるのかって一回シビアに考えたんですよね。
直さん:そうですね。予算とかのところでいろいろ考えて。
奥さま:せっかく自分たちのやりたいことをやるためにリノベーションを選んだはずなのに、そのやりたいことを我慢しなきゃいけないんだったら、もうちょっと物件見てもいいねってなったんですよね。
市川:全部で11軒見ましたね。
旦那さま:1日でマックス3.4部屋は見たよね。
市川:3ヶ月くらいだったと思います。
奥さま:私は3ヶ月で決まると思ってなかったというか。これって、自分で蹴りをつけないと無限じゃないですか(笑)。私たちの場合、いつまでに買わなきゃいけないってお尻が決まってたわけでもないから、蹴りのつけどころが難しかったけど、今の物件を見たときにすごくいいなって思ったんですよね。
旦那さま:“ビビビ”だったよね。
奥さま:窓の大きさと、カーテン越しの景色で一目惚れだった。
旦那さま:緑が見える感じがすごいよくて。
奥さま:マンション自体もちゃんとしてて、広々してるし。
市川:ベランダでもいろいろできそうですよね。
奥さま:この間プールやったんですよ。
市川:そうなんですね!
周辺環境について
桃子さん:お二人の部屋探しで印象的だったのが、間取りや金額、スペックだけじゃなくて、こういう人がいるんだなってフィーリングを大切に探されてる感じがしました。
旦那さま:確かにそうですね。数字だけ見ててもわからないものが、実際に見に行ったときに「あ、こうなんだ」ってわかる。
奥さま:やっぱりそれは「あかぎハイツ」に住んでたからってことが大きかった気がします。
旦那さま:あ、そうそう。「あかぎハイツ」も多分、スペック以外のところが面白かったから。
奥さま:みんなで餅つきやったり。
旦那さま:屋上で花火大会見たりとか。
市川:ご案内してる以外の時間も、周辺環境を車で見に行かれてましたよね。
奥さま:そうでした。このマンションは、周辺環境にマイナスがないなって思ったんです。
旦那さま:そうそう。嫌だなってところがなかったから。
市川:10軒とかみてると、「ここ」っていうのも大事だけど、いろいろ見た中でマイナスがないって消去法で選んでいくことになりますよね。
奥さま:うんうん。景色にすごく惹かれて、周辺環境的にもマイナスはなさそうだなって思って、ここに決めた感じです。
市川:5年間住んでみて、八柱やみのり台の生活環境や雰囲気はどうですか?
旦那さま:みのり台はすごい住みやすかった。
直さん:スーパーがたくさんありますよね。
市川:馴染みの八百屋さんみたいな。
Sさん夫婦:そうそうそう(笑)。
奥さま:みのり台の方が下町感があって、みんなの顔が見えてる感じがあったんですけど、こっちはまだあんまり顔が見えない感じはするかなぁ。
旦那さま:八柱はお互いの仕事場のちょうど中間だし、場所的に便利だったのと、ご近所さんがいい人ばかりだったのがすごくよかったな、と思います。マンション自体が築10年とかだから、ちっちゃい子がいる家族はそんなにいないんですけど、だからみなさん小さい子どもをすごく可愛がってくれるというか(笑)。
奥さま:マンションの規模がすごく大きいから全員の顔は見えないんだけど、近くに住んでる人たちが気にかけてくれたり、エントランスとかで会ったら手を振ってくれたりする。小学生のお姉さんたちが子どもと一緒に遊んでくれることもあります。
旦那さま:あと、徒歩圏内に大きい公園が多いので、それはすごくよかったですね。
つみきさんにお願いした理由
市川:これ(「準備シート」)、家を探しはじめるとき、お二人に最初に書いてもらったやつなんですよ。僕もSさんご夫婦のことを知りたかったし、どんな家を探してるのかってイメージをすり合わせたかったので、先にこういうものをお渡しして書いていただいたんですね。
Sさんご夫婦:あ〜、書きました!
市川:2枚目のシートには、住みたい家のハッシュタグをつけるとしたら何がいいかを書いてもらった。いくつか僕らの方で選択肢を書いてたんですけど、最後に付け足してくれたのが「家事動線」って(笑)。
Sさんご夫婦:(笑)
市川:つみきさんに引き継ぐときも、これをもとに箇条書きみたいな感じで送ったから、ご紹介がスムーズだったかなと思います。あと、もともとつみきさんのことをご存知だったこともありますし、「ときわ平グリーンパークマンション」(つみきさん施工のリノベーション物件)の床塗りワークショップにも来ていただいてたんですよね。
奥さま:そうそう。そのあとみんなで、ここの近所にある読書カフェ「ひとつぶ」(つみきさん施工のリノベーションカフェ)も見に行ったんですよね。
旦那さま:「あかぎハイツ」でリノベされた部屋も見てたから、なんとなくテイストもわかってたし。
奥さま:私たちもその雰囲気が好きだったからね。
市川:最初からつみきさんいいかもって思っていただいてたので、その辺もスムーズにご紹介できたなと思います。
奥さま:つみきさんかなと思って。
直さん:僕らもSさんご夫婦かな、と思って。
一同:(笑)
市川:相思相愛(笑)
奥さま:人と人だから、相性ってあるじゃないですか。その辺はやっぱり大手じゃなくて、なんとなく人となりもわかってる人に頼めたのは嬉しいし、それを大事にしたかったなって思いました。
直さん:僕らとしても、実際にわれわれがつくらせてもらった空間を見た上でこういったお話ができるから、全体が共有できた部分もあると思います。ショールームでも持ってない限り、実物を見た状態でお話しできることってなかなかないんですよね。
旦那さま:確かに。
直さん:このエリアはomusubiさんといろいろやらせてもらって、手がけた案件もたくさんあるから。この街だからできたこともあると思う。
旦那さま:木の感じとかも実際に見れてよかったですね。
市川:そうですよね。サンプルだけじゃわかんないですもんね。
奥さま:一枚で見たときと並べたときでも印象が違いますしね。
リノベーションの進め方
その後、物件を購入する前につみきさんにも部屋を見てもらい、リノベーションのイメージを共有。できること/できないことを確認した上で、晴れてマイホームを購入されました。
市川:そこから僕の手を離れてリノベーションがはじまったと思うんですけど。工事までの間、結構打ち合わせされてましたよね。
直さん:最初、うち(河野家)で打ち合わせをやってたんですよね。お互い子連れで。
奥さま:そうそう(笑)。それも子連れにとってはありがたかったな、と思って。他の会社に相談しに行ったときは、ずっと抱っこしてなきゃいけなくて。でもご自宅だったので、おもちゃも貸していただけたり、子連れにすごくありがたい!と思いました。
桃子さん:すごいわかる。(隣の部屋で遊んでいる子どもたちを見ながら)
一同:(笑)
市川:最初に何回ぐらい打ち合わせして、それがどう形になっていったのか、過程を聞かせてもらえますか?
桃子さん:私たちも、いつもお施主さんのことを知ることからはじめているんです。さっきのomusubiさんのシートにあったような、どんなことが好きで、どういう過ごし方をされるのかをイメージするために、実際の工事とは関係ないこともお話ししたかなぁと思います。
直さん:あとピンタレストもお願いしたんだよね。
奥さま:好きなものをチェックしたのを、そのまま共有したよね。
旦那さま:そうだね。キッチンの感じとか玄関の感じとか。
奥さま:1回目はざっくばらんに話して、多分2回目ぐらいで模型をつくってきて下さったんですよね。
旦那さま:3パターンくらい出してくださって。
直さん:お友達を呼んで食事をすることが多くて、それが楽しくなることがお二人にとってすごく大事だったので、キッチンをどう配置するかが主題だったんですよね。なのでキッチンのレイアウトを3パターンくらいつくりました。
市川:キッチン、めちゃくちゃいいですよね。つまみつくりながらお話もできて。
旦那さま:自分では思い付かないようなデザインだったから、すごい、と思って。
桃子さん:お二人で、これはあり/なし、っていうのをせーので言ってもらったりしましたよね。
Sさんご夫婦:そうだ(笑)。
桃子さん:すごく仲良く、「せーの、あり!」とか言って(笑)。
旦那さま:壁と床の組み合わせとかを、何パターンも用意してくれたんです。それを好みで絞っていったんだけど、なんとなく一致したんだよね。
直さん:これがね、驚くほど一致するんですよ。9割ぐらいは同じ。
市川:すごい!(笑)お二人のなかでは、リビングの内装はどこからイメージが決まっていったんですか?
奥さま:それこそピンタレストで好きなやつは保存してたけど、全体のイメージはあんまりなくて。塗料の見本を見せていただいたときに、こんな色あるんだ、すごい素敵だねって言ってキッチンの壁の色が決まったところから、そこを基盤に他の色の組み合わせを何十パターンと出していただいて。その中から選んでいった感じです。
市川:つみきさんとしては、ご要望はありつつもどういうところに力を入れたんでしょうか?
直さん:キッチンは全員のこだわりが詰まってる場所で、多分大工さん的にもこだわりがある部分。ダイニングテーブルの一部が曲線になってることで、たくさん人が集まって並んでも一体感が出るように設計したんですね。図面でこの曲線を書くことは簡単なんですけど、大工さんがすごく難しい技術でつくってくださった。
旦那さま:これ、全然継ぎ目がわかんないんですよね。多分3本くらい繋いでるんですけど、一枚みたいに見える。
奥さま:キュって接着してる。ビスとかも使わないんですよね。
市川:ええ!
桃子さん:バーカウンターもすっごく具体的に考えましたね。高くなってるのは、ご主人がお酒を飲んだりできるように。
奥さま:人が来たときはすごい楽しいよね。
暮らしやすさを考えた設計
市川:僕、リノベーション工事をしている頃に偶然奥さまと会って、「つみきさんに頼んでよかった」って話をした中で印象的だったのが、「この高さにしてこれを取りやすくする」っていう家事動線まで考えてくれてるのがすごくよかったっておっしゃってたことで。奥さま:ランドセルとかの話をした気がします。「子どもが小学生になったとき、どこにランドセルを収納するのかまでイメージできないんです」って言ったら、小学生のお子さんがいらっしゃるから教えていただきながら、じゃあサイズこれにしましょう、とかって。
市川:経験談を元に。
奥さま:そう。あとはベビーカーもそうですね。玄関からそのまま入れるようにしたいって言ったら、その場でベビーカーの大きさを測ってくださって(笑)。大体このくらいあればいけるんじゃないですかっていうのを図面と見比べながら設計していただきました。
桃子さん:玄関も大事だったんですよね。
奥さま:あまり綺麗じゃないものは玄関周りに置いておきたいから、玄関は広くしたいって伝えたら、ちょっとずつ広くしてくれたんです(笑)。
旦那さま:洋室の壁をちょっとこっちにずらしてもらって。あとは玄関ドアのほかにもう一個勝手口があったから、そこに土間をつくってもらったんです。勝手口の方にアウトドア用品とかをしまえるようにして、用途を2つに分けた。
奥さま:めっちゃぐちゃぐちゃなんですけど…(笑)。
旦那さま:でもそういうふうに使いたかったんだよね。
市川:気使わないで収納できるっていいですよね。
奥さま:水道もつけてもらったんですよ。もともと洗濯機用だった場所を活用して、洗濯機は壁の向こう側に移動してもらいました。
桃子さん:土足スペースを広く使えるようにしたんですよね。
市川:水道は何に使うんですか?
奥さま:靴とかキャンプ用品を洗ったりするのに使ってます。あとはベランダでプールをやるときに、ここからホースを引っ張ってベランダまで水を持っていってますね。
“独り立ち”するDIY
この日の座談会で一番の盛り上がりを見せたのが、リビングの「テレビ台」をめぐっての会話。テレビがジャストフィットで収まるこの台に、Sさんご夫婦の住まいを語る上で欠かせないポイントがありました。
市川:これがすごいんですよね。
直さん:何回見てもすごいなと思う。
奥さま:田中さん(つみきの社員さん)と一緒にDIYでつくりました。
旦那さま:ほぼ1日でつくった(笑)。
桃子さん:つくられたことも素晴らしいですし、その前段階のスケッチがすごい。
直さん:これ設計したの、ほとんどお二人なんですよ。
市川:え、すごい!
奥さま:いやいやいや。
直さん:内寸法で考えるって話と厚みの話をしたら、宿題で設計図を描いてこられて。で、買い出しもお二人で。
奥さま:こぐちテープを板の切断面に貼ったんですけど、これがあるだけで見栄えが全然違くって。これはつみきさんに教えていただきました。
市川:塗装も全部やって…。扉なんて、なかなかつけられないと思いますよ。
奥さま:本当に大変だった(笑)。寸法通りだったんですけど、ここに扉を付けたことによって開かなくなっちゃって、角を削ったんです。
旦那さま:友達も呼んで、手伝ってもらいましたね。
奥さま:自分たちだけじゃ、途中で挫折しちゃってたと思います。一緒につくっていただいたから、できなかった部分がどんどんクリアできて完成させられた。
直さん:基本的には僕たちも一緒にDIYするんですけど、全体の作業の中の一部だけでも材料調達も含めてほとんど施主さんたちだけでやることで、あとから自分たちで何かやりたくなったときにハードルが下がるんじゃないかなと思ったんですよね。
奥さま:で、そのあとにこっちをつくったんですよ。
直さん:おお! え、これ(シンク)埋め込んだんですか!?
奥さま:そう、100均で買ってきて。
市川:すごい! …じゃあもうキッチンつくれますね。
一同:(笑)
奥さま:最初、ドリルでガーってやって、そのあとジグソーで真ん中を切って。工具もマキタで一式買いました。穴あけて、これ(ポンプ)も埋め込んだんですよ。
直さん:本当だ!
奥さま:ハンドソープを分解して、ここで手を洗えるように。
桃子さん:素晴らしい…。
直さん:こんな感じでDIYが続いたらいいなって思ってたから、素晴らしいですね。
市川:つみきさんは、Sさんご夫婦だけじゃなくいつもそういう行程を入れてるんですか?
直さん:そうです。つくりながら住んだ方が楽しいって気持ちがあるから、お施主さんがその後も続けられるようにつくり方をお伝えしたい。でも今回は特に、もともとつくるのが好きなお二人だったので、いつもより大規模にそういう設定のものをつくって、やっていただきましたね。
奥さま:今はネットでいろいろつくり方が出てるんですよね。教えてもらったから、それを見たらだいたいのものはつくれちゃう。自分たちの欲しいもので、かつ欲しいサイズのものってなかなか見つけられないから、ないならつくろうかって。
市川:テレビ台も、家具として買ったら金額的にも結構しますしね。
直さん:しかもかっこいい。
さらに、リビングの壁もSさんご夫婦自ら手を動かして塗装。入り組んだ難しい箇所はつみきさんの手を借りながら、大学時代のご友人をたくさん呼んで、みんなでセルフリノベーションしたのだそう。
こうしてプロに教えてもらいながら部屋づくりに参加できるのは、そこでの暮らしに愛着が湧くとともに、その後の人生でも大きな財産になりますよね。
住まいづくりを振り返ってみて
市川:工事期間はどのくらいかかったんですか?
旦那さま:1月の終わりくらいからスタートして、なんやかんや4月の頭くらいまで。
奥さま:工事は4月の頭に終わってたんだけど、そのあと私たちのDIYをしてたよね。
旦那さま:全部で2ヶ月から2ヶ月半くらい。
市川:あ、そんなにかかってないんですね。解体とかもしなかったですもんね。
旦那さま:早っ!と思いました(笑)。
奥さま:あっという間だったよねぇ。結婚式の打ち合わせみたいだった。
市川:ははは! 確かに(笑)。
奥さま:自分たちの好きなものとかも言いながら打ち合わせして。
旦那さま:宿題もあって(笑)。
奥さま:楽しかったよね。最初は工事がはじまるのちょっと遅いんだなって思ったけど、実際打ち合わせしてたらそのくらいの時間必要だった。
市川:じゃあ最後に、これからリノベーションをしたいと思ってる方に向けて何かアドバイスはありますか?
旦那さま:なんだろう…。うちは、こだわるところとそうでもないところがハッキリ決まってて。キッチン周りとか、玄関こうしたい、みたいなのはイメージとしてあったから、つみきさんもそれに対して提案してくれた。こだわるポイントがどこなのかを最初に決めて進めていくのがいいんじゃないかなと思います。
奥さま:これまで住んできた部屋の不満とか不便さが、「次こうしたい」って原動力にはなるんだなって思った。
市川:そこを元に重点的に変えたいところが、お二人の中で共通してたから進めやすかったんでしょうね。
奥さま:そうですねぇ。「あかぎハイツ」さんにいるときの経験が、今に繋がってるよね。あとは、ピンタレストで二人の意見をすり合わせる(笑)。
旦那さま:確かに(笑)。
そうしてこの日の座談会は終了。
座談会の〆には、施行中に大変お世話になったという「藤亭」さんで出前を注文。リノベーション工事が終わった今もSさんご夫婦ご用達となっている、思い出の味です。
自らの手と足を使い、人との触れ合いの中で納得の住まいを完成させたSさんご夫婦。「やりたい」と思ったことを次々と実現させていくご家族の周りには、たくさんの笑顔が溢れていました。
文章・写真:岩澤春香