omusubi不動産の入居者さんであり、絵描きとして活動をしている野々上聡人さん(通称・ののさん)。
海外での生活を経て、現在は松戸に暮らすののさんに、自分の作品や、ののさんにとっての‟つくる”ということについて伺っています。
互いに出身地も年齢も同じ、omusubi不動産代表の殿塚とのトークは、友人の会話のように自然体で進んでいきました!
後半では、表現者としての在り方や社会との繋がり方や、不動産屋とアーティストという一見交わらなさそうな2人の立場の関係性についてお聞きしていきます。
*前編はこちら! 「息をするように描き、ものをつくる。絵描き・野々上聡人さん(前編)」
■日常の中の面白さを感じられるように■
殿塚:ののは日本に戻ってきて、前よりも自分が自然体な状態をつくろうとしているわけだよね。そのためになんか意識してることとかあるの?
ののさん:興味を絶やさない、自分のアンテナを高く張っておいて、描きたいっていう気持ちを常に持っている、っていうことを考えているかもしれない。慣れていくからね、すべてに。旅したり、どこかに行くっていうのもそうなんだけど。
描きたい、ビンビン感じてる、みたいな状態に自分をもっていっておく。描いていてたい、って思えるようにしているかもね。無意識に。
殿塚:何するとそうなるんだろう?
ののさん:日常的なことに発見とか面白さがめっちゃひそんでるから、それを感じられるようにしてるかな。特別何かするようにしているっていうわけではないけど。
殿塚:おれ、ののってほんとにおもしろいなって感じる瞬間がよくあって。
うちの事務所の前に桜の木があって、それが背丈くらいのところで切られて切り株になってたの。ののと待ち合わせしてたら、ののがその切り株の上に座って待ってたことがあって。それ見て、「のの、桜の木、ベンチにしてんじゃん!」っていって超笑っちゃってさ。その選択肢、おれにはなかったなと思って。感性がうらやましかったんだよね。
ののさん:どうせ同じ‟待つ”なら、少しでもいい景色の中で待ちたかったんだと思う。その時は、「俺の真っ二つに切られた下半身の断面に、木の芽が生えてきてもほっとこう」とか考えてた。
そうゆう風に考え事が連鎖するのと同じように、インスピレーションが繋がってゆくんだと思うよ。
殿塚:ののは、これから先も表現者として自分の人生をまっとうしていくつもりなの?
ののさん:もうこれしかやることないっしょ。これしかやる気ない。
殿塚:でもそこに悩む人もいっぱいいるじゃない?
ののさん:そうだね、そこはとっくにクリアしてるね。
殿塚:そこをクリアしてるから、もしでかいプロジェクトとか来たとしても、ののは生活のためにそこにしがみつくこととかをしない人だなって思う。
ののさん:そういうプロジェクトとかも嬉しいけどね。でも俺の場合、表現者として生きるっていうのは、消去法なんだよね。これしかできないっていうか。
ただ、続けていくことってほんとに難しくて、それが結構並じゃない。つくるものの強度をあげたり、絵を描き続けたり興味を絶やさないようにすることに、俺の容量全部使ってる感じかなあ。
■表現する人と不動産屋の新しい関係性■
殿塚:omusubiの入居者さんって、ののたちみたいにアーティストだったりものをつくっていたりする人たちが多くて。いわゆる不動産の申込書の職業欄に「その他」ってあるじゃん?うちの入居者さんは「その他」の人が多い。(笑)
個人的にはすごくいいことだと思うんだけど、ののはその筆頭だよね。(笑)
ののさん:俺は職ないし、服汚れてたりするし。(笑)不動産屋さんからすると信頼ないやつナンバーワンでしょ。これまでの人生はもう不動産屋との戦いだったね。(笑)
殿塚:でもさ、いつもののと話してて思うんだけど、ののって幼稚園のときに学んだことにすごく忠実だよね。「友達には親切にする。迷惑かけたらちゃんと謝る」みたいな、人として本質的なこと。ののと接してて、そこに安心感があるんだよね。
だから多少やんちゃはあるかもだけど、俺は信頼して使ってもらえる。
ののさん:そう?おもしろい。うれしいね。
これまでの不動産屋さんとは、どっちからも歩み寄れないし、どっちからも信頼関係作れないし、みたいな感じだったんだよね。omusubiみたいに相談しながら、お互い幸せになるような感じでやってるのは初めてだし。
殿塚:俺たちは不動産屋だから、ののたちみたいな人が自由にできて、さらにオーナーさんも喜んでくれるみたいなのが最高じゃん!
だからomusubiがオーナーさんから物件を借りて、さらにomusubiから入居者さんに貸すってやり方をすることが多い。そうすると、omusubiが家賃とかのリスクを取るから、その分おれたちがいいと思う人に使わせてあげてくださいってすることができる。
ののみたいな人たちが、自分らしさを損なわず活動を続けるために、不動産屋としてもっと何かできないかなって、常に考えてるんだよね。
■表現する人と地域社会が、不動産屋によってつながる■
殿塚:アーティストってものをつくる人と、プロデュースする人と、両面が必要じゃない?でも、ののってどちらかというと作る側の人だと思うから、あるとき誰かに見つけられるってことが必要な気がするけど、どう思う?
プロデュースとかPRみたいなことってどう考えているの?
ののさん:ひとりでも多くの人に作品を見てもらいたいと思ってる。だから、有名になりたいとか、お金にしなきゃとかっていう思いはあるよ。社会とつながるってそういうことでしょ。
殿塚:今やってるオープンアトリエとかもそうなの?
ののさん:予約してアトリエに来てくれたら、いつでもおれの作品が見れるよっていう状態を作ってる。これも実験の一個だね。
ネットとかでいいアーティスト見つけることあるでしょ?でもそのとき個展やってることってめったにないし、SNSの更新もなかったりすると、だんだんその人に対する熱が失われてく自分に気づくの。刺激的なビジュアルとかネット上には溢れてるからさ、どんどん更新されてって、その人がもう旬じゃなくなっちゃってたりするじゃん。
いつどの瞬間に誰が自分の作品を「見たい!」って高まってくれてるかわからないから、来さえすれば必ずみれる場所があるっていうのが重要だって思ってやってる。
殿塚:ののが日々何かを表現をし続けて、それを見れる場所ってことだね。そしたら、ののにお願いできそうな話やプロジェクトも、まずはどんどんふればいいのかな?それで、ののがやりたいかやりたくないか選べばいいよね。
ののさん:そうだね。
若い頃海外行って戻ってきて、日本全然捨てたもんじゃないじゃんって考えたり、知り合う全ての人を巻き込んでく美佳ちゃん※1の影響もあって、俺松戸でもっと人と関わりたいなって思ったりしてるのね。もっと地元で知ってもらわないとな、とか。だからとのから来る話はうれしいから、どんどん振って。
殿塚:それは俺も嬉しいよ。そんなら、色々一緒にやっていけるといいよね!
ののさんの口から、幾度となくでていた‟自然体であり続ける”ということ。ののさんは、つくることだけでなく、生き方や社会に対する姿勢においてもそれを貫いています。その根底には、「これで生きていく」という覚悟がありました。
その覚悟や意識は、アーティストや作家さんだけでなく、自分でやりたいことを実現しようとする人にとって、とても大切なもの。
そうした思いをもつ人たちへ、私たちも不動産屋という立場だからこそできるサポートをしていけたら嬉しいです。
ののさんが、この松戸という場所で出会った人やものを通じて、どんな‟子”たちを生み出していくのか、とても楽しみにしています!
※1 画家の北見美佳さん。omusubi不動産の入居者さんであり、北見さんにもインタビューさせていただきました!
「絵と共に、どんな出会いも楽しんで生きる。画家・北見美佳さん」
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絵描き 野々上 聡人(ののうえ あきひと)
1984年生まれ 絵を描き、国内外で展示をします。(いままでにドイツ、オーストラリア等)
彫刻、アニメーションも作る。
2010年 ベルリンのスクワットギャラリー「タヘレス」で個展
2014年 モントリオール世界映画祭、新千歳空港国際アニメーション映画祭 ノミネート
2017年 同映画祭、北海道銀行賞受賞
twitter:https://twitter.com/N0N000
インスタグラム:
https://www.instagram.com/nonowe_akihito/
こちらのリンクからは制作されたアニメーションがご覧いただけます!
https://vimeo.com/keblujara
連絡先:
TwitterまたはインスタグラムのDMからご連絡ください。
野々上さんは、いつでも作品を見て頂けるオープンアトリエを行っています!
ご希望の方は、事前にTwitterまたはインスタグラムのDMより予約をお願いします。
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