おむすびマガジン 第15068号
2018.3.22発行

息をするように描き、ものをつくる。絵描き・野々上聡人さん(前編)

omusubi不動産の入居者さんには、作家やアーティストとして活動されている方が少なくありません。

26041884597_8d91942749_z (1)
絵描きの野々上聡人(ののうえ あきひと)さんもそのひとりです。

野々上さん(通称ののさん)と話していると、いつのまにか何かを手にしてものを作っていたり、絵を描いていたり。

そんな様子を見て、私たちはよく「ののさんって生まれたときから絵描きって感じだよね」と話しています。

今回は、互いに松戸出身で同い年のomusubi不動産代表・殿塚と、ののさんがトーク。ののさんにとっての描くことや、表現者として大切にしていること、世の中との繋がり方などについて、立場が異なるもどこか共通点がありそうな2人がざっくばらんに語りました。

盛りだくさんの内容を、前・後編でお届けします♪

■‟目をつぶってしまう”部分に向き合わせる絵■
40509762971_544e5b6aaf_z
殿塚:そもそも、ののって、人に自分のことなんて紹介してる?

野々上さん(以下ののさん):絵描きかな。でも絵だけじゃないなと思ったりもするね。

殿塚:アニメーションつくったり、木彫りもしてるもんね。前、犬とかも作ってなかった?

ののさん:ああ、いるよ。

殿塚:ののって自分の作品のこと「あるよ」って言わないよね。「いるよ」って言う。なんかある意味、ののにとっての子どものような感じがするね。 

25639486467_769b8a2d8d_z
ののさん:こいつ、自分の家の近くで枝とか全部拾って作った犬。常盤平産の犬だね!それでね、この鳥が犬の上に巣を作っちゃって・・。犬が移動すると、この鳥は巣に戻るために犬を探すところから始めなくちゃいけないっていう。(笑)

殿塚:そんなストーリーがあるんだね。

26638922708_88eee96166_z
殿塚:じゃあこいつは?なんか羽あるけど飛べなさそうだけど。

ののさん:決して飛べなさそうだよね。(笑) 

40509752221_6f00874431_z
ののさん:そして飛べないこいつが見る夢があるの。夢の中ではびゅんびゅん飛んでいく。それがあの絵。

殿塚:作品が連動してストーリーになることもあるんだ。

39799698034_1d2a42a57b_z
殿塚:あの大きいのは?

ののさん:あれは「幽気凛々(ゆうきりんりん)」っていう絵だね。幽気がりんりんとわいてくるっていう。

殿塚:ただの駄洒落やん。(笑)

ののさん:ね。笑 気合入れてぼけてるみたいな。(笑) 

殿塚:ののがつくる作品ってさ、そんなオチャメなストーリーもあるけど、一見ちょっと生々しく感じる人もいるんじゃないかと思うんだよね。

ののさん:そうだね、苦手な人もいるみたいよ。

殿塚:前に鶏をさばくのを見たことがあって。おれはほとんど見てただけなんだけど。でも普段チキンとか食べてる分際だから、せめてちゃんと見ないとって思ったんだよ。ののが描いた絵を見た時の印象って、鶏をさばくのを見た時に似てるんだよね。

ののさん:普段目をつぶっちゃってる部分に向き合う感じね。昔は結構、言葉でもそういうこと言ってたかもしれない。

■常に自然体で描く状態にしたい■
殿塚:アーティストでもアカデミックな教育を受けてきた人だと、コンセプトとかしっかり言語化してる人もいるじゃん。ののってそうじゃないんだよね。なんか土から出てきたアーティストみたいな感じがするんだよ。

ののさん:そうだよね、生活に密着してるよね。もっとね。

殿塚:何考えながらつくるようにしてるの?

26638924708_8b468e3ac4_z
ののさん:何も考えてないんだよね・・。
例えば、歯磨きしてたのにふっと何かが目についちゃって、続きやり始めて、気づいたら30分ぐらい歯ブラシ口に入れたままだった、ってことはよくある。

殿塚:どういうときに閃きやすいとかはあるの?

ののさん:ないね。俺にとって描いたりつくるってことは、日々の累積なんだと思う。書いてるとか作ってるって状態を、飯食うとか息するとかぐらいにニュートラルにしたい。自然体で描けてるって状態にしておきたいんだ。

殿塚:生きてることが描いてることってことでしょ。それって絵描きとして究極じゃない?

ののさん:昔は結構「死ぬ気で描く」とかって思ってたこともあったけどね。でも今は‟制作”って言っちゃうとちょっと不潔だし、もっと自然体の状態で作れる方がいいかなって思ってる。

殿塚:「‟制作”って言うと不潔」っていうのはどういうこと?

ののさん:制作っていうと、「作品とかプロジェクトをつくる」っていう感じがするじゃない。でも表現者としては「ものをつくる」っていうほうが自然な気がして。
例えばさ、昔テストの答案の裏に絵とか書いてたじゃん。電話してると手元の紙になんか書いてたり。あのレベルに結構本質がある気がする。「作品をつくる」っていう欲が深くない状態で、作品をつくるっていう。

殿塚:ののが作るものは、意図して作ってるものじゃなくて、自然物なんだね。

26638909078_425964ae3a_z
ののさん:自然体でつくるっていうことは、迷いがない状態でつくるっていうこと。
わかりやすく言うと、意図して作ろうとしてるときはここは赤か青かっていう選択肢が生まれる。そうするとあとでこっちが正解だったなっていうことがあるんだけど、自然体でつくってるときはそもそも選択肢がない。常に迷いがない状態で描くことができるから、間違いがないの、絶対に。
鳥の飛び方とか見て「もうちょっとこうだったらいいのにな」って思う人っていないじゃん。あれと同じ状態にしたいね。

■日本でやっていきたいと思ったドイツでの生活■
殿塚:ののにとっては、「いいものつくるぞ」っていうその感じがもう、表現者として違うんだね。いつくらいからそう思うようになったの?

ののさん:わかんない。いつの間にか。

殿塚:昔は違うって言ってなかった?

25639492077_9b040019e1_z
ののさん:昔ドイツ行ってたことがあるんだけど、そのときは結構違ってたね。
普通、「死なない」っていうのが生きる上で最低限のハードルでしょ。でも、そのときはさらにその下に「描かない」っていうハードルを設けてから行ったの。つまり死んでも描かないっていう状態だけは避けるっていうことね。
その考え方も含めて、あのときは死ぬ気っていうか、どうなってもいいからとにかく描く、みたいな状態だったね。

殿塚:ドイツに行ったきっかけはなんだったの?

ののさん:日本で作家活動してると、追い詰められているような気持ちになってくるんだよね。

殿塚:世間の目がってこと?

ののさん:目なのかな・・空気?なんか日本にいて「これっていいの?大丈夫?」っていう気持ちになってきてさ。おれ、心が嫌な感じになってきたりするとすぐどっか行きたくなったりするんだけど、それで行ったのかな。

殿塚:日本に閉塞感をもったってことなのかな。でも、今って意外と作家やアーティストとして日本で生きている人って多くない?

ののさん:それを、日本に戻ってきたときに感じたんだよね。日本にも面白い作家めっちゃいるじゃん!って。作家として生きている人もめっちゃいる。これは、おれ日本でやれないともうだめだなって思ったんだよね。

40509778771_0650c280c5_z
ドイツから戻ってきて、「自然な状態でものをつくる」ことを日本で目指すようになったというののさん。

後半では、そんなののさんが考えるアーティストとして社会と繋がっていく方法や、これからやっていきたいことについて伺っていきます!

*後編はこちら

====================
絵描き 野々上 聡人(ののうえ あきひと)

1984年生まれ 絵を描き、国内外で展示をします。(いままでにドイツ、オーストラリア等)
彫刻、アニメーションも作る。
2010年 ベルリンのスクワットギャラリー「タヘレス」で個展
2014年 モントリオール世界映画祭、新千歳空港国際アニメーション映画祭 ノミネート
2017年 同映画祭、北海道銀行賞受賞

twitter:https://twitter.com/N0N000
インスタグラム:
https://www.instagram.com/nonowe_akihito/
こちらのリンクからは制作されたアニメーションがご覧いただけます! 
https://vimeo.com/keblujara

連絡先:
TwitterまたはインスタグラムのDMからご連絡ください。

野々上さんは、いつでも作品を見て頂けるオープンアトリエを行っています!
ご希望の方は、事前にTwitterまたはインスタグラムのDMより予約をお願いします。
====================